未接続の分岐配線も信号を変える
一言でいうと
何もつないでいない分岐配線も、高周波では存在しない配線ではありません。開放された端で反射した波が戻ってきて、特定の周波数での伝達を大きく減らすことがあります。今回は、抵抗とコンデンサーの単調なローパス応答の代わりに、分岐線路が作る周期的な谷であるノッチを探します。最も深いノッチ1つ、最初のノッチ、ノッチの間隔は、それぞれ別の情報です。
なぜ必要なのか
テストポイントや使っていない接続を短い線と考えると、追加の負荷を無視しがちです。しかし重要なのは、絶対的な長さだけでなく、波長の何分の1かということです。信号が分岐の端に到着して反射し、戻ってくる間に位相が変わるので、周波数ごとに異なる負荷のように見えます。分岐の端が開放だからといって、分岐の始まりでも常に無限大のインピーダンスに見えるわけではありません。理論上の極端なゼロ点を、実物の計測値に広げないように、今回のモデルは無損失の線路で、損失・寄生成分・測定ノイズを省略していることを明示します。
どう動くのか
ソース抵抗と本線の負荷は、それぞれ50Ωです。2つの抵抗の間の接点から、50Ωの線路が1本横に伸び、その端は開放または50Ωで整合しています。本線の追加の伝搬遅延は、モデル化しません。分岐がないとき、接点の電圧は入力の0.5倍です。開放した分岐のアドミタンスはj·tan(2πfTD)/50で、接点から見た複素伝達関数はH=0.5/(1+0.5j·tan(2πfTD))です。TDは片道の遅延の、秒の単位です。nsの値をそのまま入れると、周波数の関係がまったく変わります。
最初のノッチは、片道の長さが1/4波長になるf=1/(4TD)の付近です。その次は3/(4TD)、5/(4TD)のように奇数倍で現れるので、隣り合うノッチの間隔は1/(2TD)です。TD=1nsなら、250、750、1250、1750MHzになります。間隔500MHzから遅延を逆算するときは、1/(2×間隔)を使います。最初のノッチの式の4と、周期の式の2を混ぜると、2倍の誤りになります。ngspiceでは、開放を1兆Ωの抵抗で近似するので、理想式の正確なゼロ点とは、ごくわずかな差があります。
ノッチの検出は、周りより低い内側のサンプルを探す作業です。左や右の端点には、両側の隣がないので、谷かどうかを確認できません。平らな底が複数のサンプルにわたるときは、複数のノッチではなく1つと数え、最も低い周波数を代表として決めます。このラボの検出のしきい値は、分岐のない応答に対して−15dB以下です。浅い揺れをすべて共振として数えないための学習用の定義であり、すべての機器で使われる普遍的なノッチ検出の規則ではありません。
観測できるものとできないもの
周波数は、10MHzから2GHzまで、1MHz間隔で調べます。TD=0.2nsなら、この範囲にノッチが1つしかないので、間隔から遅延を求められません。最初のノッチからモデルの仮定で推定することと、2つ以上から周期を観測することは、異なります。periodicはNoneのままにして、入力のTDを観測の結果に移してはいけません。TD=0.35nsの最初のノッチは、理論上は約714.286MHzですが、グリッドで最も低いサンプルは714MHzです。サンプルの周波数を、無限の精度の共振周波数として報告してはいけません。細かい再探索は、次の検証課題です。
ノッチの間隔が複数あれば、中央値で代表の間隔を求め、最大の相対偏差も報告します。不規則な谷を、無理に1つの周期のように見せないための仕組みです。また、関心のある帯域での最悪値は、その帯域の中のサンプルだけでなく、2つの境界の補間値まで含める必要があります。全体のスキャンの深いノッチが、関心のある帯域の外にあるという理由で、規格の失敗とすると、質問が変わってしまいます。
現場での姿
分岐の端に50Ωを付けると、その線路の入力も50Ωに見えて、ノッチがなくなります。しかし、本線の負荷と並列になるので、接点の負荷は25Ω、伝達は1/3に減ります。分岐のない0.5を基準にすると、20log10(2/3)≈−3.522dBです。整合させて反射をなくしたことと、元の信号の大きさを保ったことは、同じ成果ではありません。最大値を0dBに正規化し直すと、まさにこの損失を隠してしまうので、基準はすべての条件で0.5に固定します。
今回の学習用の規格は、10–200MHzの全区間で、基準に対して−1dB以上です。開放のTD 0.2nsと0.5nsは合格しますが、1nsは200MHzで約−5.274dBなので、失敗です。整合した分岐は、ノッチがなくても約−3.522dBなので、失敗です。バスやボードの認証の規格ではなく、実物の設計には、損失・配線の構造・入力の特性・関心のある周波数の、別の検証が必要です。
次のラボですること
複素予測、基準の正規化、ノッチの検出、周期の逆算、帯域の最悪値、モデルとの照合、6つの条件の実験を、順に作ります。表のパースとngspiceの実行は、提供されるヘルパーを使うので、今回は物理量を解釈するコードに集中します。報告書には、失敗した条件も残し、入力・回路・応答・エンジンのログを保存します。measuredはfalseで、実際の機器を測定した結果ではありません。
根拠: ngspice伝送線路モデル、 Analog Devicesの分岐線路フィルターの実験。 後者は概念の参考であり、今回の数値の回路と同じ実験機器だという意味ではありません。